袋井に遠州三山と呼ばれる三つの古刹があります。
連載「歩いて旅した東海道 袋井」で、遠州三山の一つ可睡斎を訪ねた話を書きましたので、今日は可睡斎の北東およそ二キロの山裾にある油山寺をご紹介します。
油山寺は大宝元年(七〇一)行基によって開かれたと伝わります。油山という名は、かつて背後の山から油が出ていたことに由来するそうです。天平勝宝元年(七四九)には眼病を患っていた孝謙天皇がご本尊薬師如来に病気平癒を祈願され、加持祈祷された「るりの滝」の水で眼を洗われたところ快癒したことから勅願寺となり、以後眼の守護、眼病平癒のお寺として信仰を集めています。
また油山寺の守護神は軍善坊大権現といい、足腰に霊験あらたかなことから、東海道を往来する旅人たちの信仰も集めてきたそうです。油山寺は東海道の北五キロほどのところにあり、私が東海道を歩いたときはとてもここまで足を延ばす余力はありませんでしたから、昔の人の体力、健脚ぶりにはただただ驚くほかありません。
石段を上がったところにあるこちらの山門は、掛川城の大手二の門を明治に移築したもの。
境内は緑が多く、せせらぎの音も聞こえてきます。右上の写真が、孝謙天皇の眼病が治ったと伝わる「るりの滝」です。
盛夏の日差しが鬱蒼とした木々に遮られ、次第に汗が引いていきます。
しばらく木立の中を歩いていると長い階段が現れ、その先には赤い三重塔が顔をのぞかせています。
右上の写真が本堂、秘仏である御本尊の薬師如来がお祀りされています。百年に一度のご開帳だそうです。次はいつでしょうか?
冒頭の写真にある三重塔は、建久元年(一一九〇)源頼朝が眼病平癒のお礼に建立されたもので、滋賀県の長命寺、京都府の宝積寺の三重塔とともに、桃山時代の三名塔と言われています。
このほか境内には江戸時代に建てられた本坊や書院もあり、ゆっくり山内を巡っているとあっという間に小一時間が過ぎていきました。
自然に抱かれた境内。ゆっくりと参拝しているだけで、気持ちが安らぎ、疲れた体が癒えていきます。こういうところと事前にわかっていたら、東海道を歩いているときに無理をしてでも寄り道したかもしれません。
袋井を目指して歩いているとき、こんな道標があったことを思い出します。