箱根峠を目指し東から山道を上がっていくと、畑宿という集落に出ます。現在そこには寄せ木細工の工房や店が建ち並び、木を削る音がどこからともなく聞こえてきます。
寄せ木細工というと、種類の異なる木を束ねた種木を薄く削り、それを箱などに貼り付けたものを思い浮かべる方が多いと思いますが、写真の楊枝入れはそのイメージとはかなり違います。
これは異なる木を束ねた種木を薄く削るのではなく、束ねた種木を独自の技術で刳りぬくように削り出して造られたもので、金指勝悦さんが編み出した無垢と呼ばれる新しい箱根細工です。
木の色は驚くほど多彩です。色彩豊かな木々をどのように組み合わせるか、またそれをどのように削り出していくかで、現れる模様が変わります。
模様の美しさを最も楽しめるのはお盆で、喉から手が出るほど欲しかったのですが、薄く削って貼る場合に比べ、無駄になってしまう木の部分も多く手間もかかるため、一般の箱根細工に比べ高価ですし、お盆をかついで峠越えをするわけにもいかず…。
今度箱根に行ったときの楽しみにとっておきました。
ちなみに下の写真は「歩いて旅した東海道 箱根」で触れたボールペンです。連載では寄せ木細工の歴史などについて書いていますので、ご興味ありましたらご覧くださいませ。