木島櫻谷(一八七七~一九三八)と聞いて、すぐにその作品が思い浮かぶ人は多くはないかもしれません。
実は私も、つい最近まで櫻谷の画業を知りませんでした。
木島櫻谷は京都円山四条派の流れをくむ今尾景年に学んだ日本画家で、卓越した技術から文展、帝展で大活躍、竹内栖鳳と並ぶ人気を博しました。ところが第六回文展で一席となった作品について、夏目漱石が新聞で酷評したり、櫻谷を強く推す師匠の今尾景年と、安田靫彦を推す横山大観との衝突などもあって、次第に表舞台から遠ざかっていきました。
晩年は画壇とのつきあいも絶ち、自邸に引きこもって制作に没頭したようです。
動物画を得意としていた櫻谷は、馬や鹿、鷹、虎、ライオン、熊、狸、牛などさまざまな動物を非常に巧みな筆で描いていますが、とくに素晴らしいのは動物の気持ちが伝わってくるような、純粋で愛らしい目の表現です。動物たちの瞳に吸い寄せられ、彼らが目にしているものを一緒に見ているような、そんな気持ちにさせられます。
動物画が卓越していますが、櫻谷自身動物画家という意識はなかったようで、幅広いジャンルの作品を手がけています。
今年は櫻谷の生誕百四十年。京都の三カ所(泉屋博古館、京都文化博物館、櫻谷文庫)で櫻谷の展覧会が開かれています。四年前の回顧展が大きな反響を呼び、それを機に再評価の機運が高まって、新たな作品も見つかったそうで、今回はそうした作品も出品されています。
冒頭の写真は、京都の等持院東町にある木島櫻谷旧邸内のアトリエです。八十畳の室内は天井も高く、ゆったりと制作できそうです。敷地内には、和風と洋風の屋敷も(下の写真)。これだけの屋敷を構えることができたのですから、最盛期の櫻谷の人気ぶりがうかがえます。詳しくはこちらをご覧ください。
市内各地に櫻谷ゆかりの場所が点在していますので、展覧会と合わせて訪ねてみるとより櫻谷に近づくことができるのではないでしょうか。
京都での展覧会は12月3日(日)まで、来年は東京の泉屋博古館でも展覧会が開かれます。(2018年2月24日~4月8日)
なお、11月19日(日)の日曜美術館で櫻谷展が紹介されるようですので、ご興味ありましたら是非。