大阪城公園は再建された天守閣を中心に、かつての城跡に玉造定番屋敷と同与力同心屋敷の一部を加えて昭和に入り整備されたもので、一〇五、六ヘクタールと広大です。
本丸には日本庭園、豊国神社には枯山水の秀石庭、内堀を挟んだ本丸西には西の丸庭園というように庭園がいくつもありますし、市民の森、記念樹の森など森と名の付くところも多く、歴史公園でありながら都市公園の機能も併せ持った園内にはいつも多くの人が訪れています。大阪に暮らすようになってまだ間もない頃、桜の季節に大阪城公園を訪れ、桜の隙間から天守閣がのぞく風景に見入りました。その後初夏に訪れた際は陽ざしを避け入り込んだ森が高原のようで、しばし大都会にいることを忘れ木漏れ日の下で半時間を過ごしました。ありふれた表現ですが都会のオアシスというのが相応しく、園内には春の花が多いのでこれから日一日と華やぎを増していきそうです。
梅も初春の公園を彩る代表です。天守閣から内堀を挟んだ東に広大な梅林があり、一二七〇本、一〇五種類もの梅が植えられています。大阪でこれだけの多くの種類の梅を見ることができるのは他にないのではないでしょうか。この梅林は、大阪府立北野高校の同窓会が開校百周年を記念して八八〇本の梅を大阪市に寄付したことに始まるもので、開園は昭和四十九年三月。それから五十年を経てこのような見事な梅林になっています。
先日投稿した道明寺天満宮の梅園のように、大阪城公園の梅もすでに散ってしまっているものもそれなりにありますが、木の数と種類の多さで散ってしまった隙間を埋めるに十分の花が咲いています。
入り口にここの梅林に植えられている品種の一覧があります。それを見ると、梅の種類がこんなにも多いのかと驚かされると同時に、梅の品種をほとんど知らないことにも気づかされます。幾夜寝覚め、うなじ小町、浮き牡丹、金獅子、古今集、黒雲、鈴鹿関、西王母、月影、月の桂、月影、夏衣、初雁、紅千鳥、舞扇、満月、楊貴妃……。俳人や歌人なら一句詠みたくなるような、情景的な名前がいくつも見られます。
こちらは紅千鳥。
こちらは思いのままという品種で、基本は薄ピンクですが、気まぐれに薄紅色や紅色の花が咲くそうです。あいにくこの枝には見えませんが。
こちらは日本の梅の中で最も大きな花をつける武蔵野。広大な武蔵野平野をイメージしてつけられたそうです。
急に雨が降ったかと思えば急に青空が拡がり、また急に曇り空にと、猫の目のようにお天気が変わりましたが、陽が差したとたんとある一本の梅に何羽ものメジロが集まってきました。
右の紅梅はこれからのようです。