昨年五月に第一巻が刊行されてから一年と二月ほど、おかげさまで『テオリア 高橋英夫著作集』の最終刊にあたる第八巻が刊行され、全八巻がこれで完結いたしました。
第八巻は「読書随想」と題し、『忘却の女神』(昭和五十七年 彌生書房)、『今日も本さがし』(平成八年 新潮社)、『京都で本さがし』(平成十一年 講談社)、『わが読書散歩』(平成十三年 講談社)、『本の引っ越し』(平成十六年 筑摩書房)の五冊から、編者故長谷川郁夫氏により選ばれた八十七の随想が収録されています。
父は生前、文学におけるエッセイの重要性をときおり口にしていました。おそらくそこには、エッセイがいつしかたわいもない軽い文章を指すことが多くなったことへの不満もあったのだと思います。第八巻がそうした父の思いを汲み随想集として編まれたことに、改めて父に対する長谷川氏のご理解の深さを感じます。
著作集最終巻は、編者長谷川郁夫氏の最後の仕事でもありました。
『テオリア 高橋英夫著作集』の出版につきましては、今の時代において奇跡であるとか快挙であると評してくださる方がいますが、これはひとえにこの出版に携わってくださった故長谷川郁夫氏と、小池三子男氏、西口徹氏お三方のご理解と並々ならぬご尽力の賜物です。改めまして心より御礼を申し上げます。
最終刊の表紙は収録されたエッセイの一つから。
一人でも多くの方に手に取っていただける本になることを願いつつ、完結のお知らせまで。