平安時代、京の都に蔓延した疫病の退散を願う御霊会に始まる京都祇園祭は、昨年新型コロナ感染の拡がりから、大幅に規模が縮小され、華やかな山鉾も建てられず、勇壮な三基の神輿渡御も行われず、御神霊を榊に遷し関係者のみでひっそりと御神霊渡御が行われるのみでした。
あれから一年。コロナに関する様々な情報が飛び交う中、身の処し方も少しずつわかってきたように思いますが、祇園祭のように期間中数十万人が集まる祭では慎重にならざるを得ないところがあるというのもわかります。主催者の方たちは、さぞかし悩まれたことと思います。
今年の祇園祭は、技術を伝承する意味もあり、三十二基の山鉾のうち約半数が山鉾建てを行うことになりました。人が密集する山鉾巡行と神輿の渡御は昨年に続いて中止ですが、四条通りを中心に山鉾が建つ光景を目にして、ようやく京都らしい夏が戻ってきたなと。
この日七月十七日は本来なら前祭の巡行の日でした。十時過ぎに京都を歩いていると、コンチキチンの音が聞こえてきます。最初は録音を流しているのかと思ったのですが、鉾が見えてくると、数こそ少ないものの囃子方が鉾に乗り演奏されていました。
冒頭の写真と上の写真は、巡行の際先導役を務める長刀鉾です。お囃子の演奏が終わると、裃姿の二人が巡行のときのように鉾の前に立たれ、今年このような形で開催できたことへの感謝と、来年こそ通常の体制で祇園祭ができるようにという願いを込めて一本締めをされました。その後は周りに集まった人たちから激励と感謝の拍手。偶然この場に立つことができ、私も感無量でした。
巡行がないので、早々に片付けを始めるところもありましたが、こういう場面はなかなか見る機会がありません。
上は白楽天山。下は鶏鉾です。いつもは各鉾町の粽やグッズを売る店に加え、多くの出店が出て、それを目当てに大勢の人が集まりますが、今年はそうした店がないのですっきりしています。
下は放下鉾。出店がなくこの程度の人出の中で見る山鉾も悪くはありません。
とはいえ巡行は祇園祭の目玉の一つですから、是非来年は厄神を鎮めるべく、この車輪が京都の町をしっかり捉え練り歩けるますように。
この日の夕方、榊に遷された御神霊は無事四条寺町の御旅所に遷られたそうです。一昨年、御神輿が渡御する神幸祭の様子を投稿しましたので、ご関心のある方は是非そちらもご覧ください。来年は御神輿渡御の熱気にも包まれたいものです。
祇園祭といえば檜扇です。厄除けとして祭の期間中、玄関や床の間に飾られる花で、宵山で公開している町屋のお座敷などでよく見かけたものです。偶然通りかかった花屋さんで売られていたので、祇園祭の気分を我が家にもと、一本求め床に飾りました。
黄色の檜扇。来週の後祭の頃に花開くでしょうか。