毎年八月の第一土曜日午前零時から日曜日の夜にかけて、桑名で日本一やかましいと言われる石取祭が行われます。
どうやかましいのか、私の拙い写真では耳をつんざくようなやかましさがお伝えできませんので、ここは動画の力を借りることにします。
昨年朝日デジタルに出た動画をまずはご覧ください。
夜も更け祭が最高潮に達すると、鉦の騒々しさたるや、耳が壊れるかと思うほどです。
太鼓は老若男女、次々に入れ替わって叩かれますが、太鼓の撥をひとたび手にすると、その人はその場の主役の顔に。
石取祭は旧東海道沿いに鎮座する桑名宗社(春日神社)の祭で、江戸時代の初め頃、氏子たちが町屋川(員弁川)の石を俵に入れ、小さな車に乗せて鉦や太鼓を鳴らしながら神社に奉納したことに始まると言われています。
石を奉納するのは、石占いに用いるためとか、社地の修理のためとか、流鏑馬神事の馬場の整備のためとか、諸説ありますが、確かなことはわからないようです。右下が石を詰めた俵です。
時代を経るごとに、祭車は大きく装飾的になり、高村光雲や井尻翠雲らによる装飾が施されたものや、漆塗りのものなど、今では四十三台もの祭車が出ます。一つの神社の祭でこれだけの山車が出るのはそうそうありません。
石取祭は土曜日の午前〇時の叩き出しによって始まり、日中から夕暮れ、夜にかけて、各町内を鉦や太鼓を鳴らしながら練り歩きます。本祭の日曜日は、午前二時に叩き出し、夕暮れ時桑名宗社に結集すると大団円の盛り上がりを見せます。
祭車は昼間と夜ではだいぶ雰囲気が変わります。
灯りに照らされた彫刻はどこか幻想的です。
最初あまりの騒々しさにびっくりしましたが、鉦と太鼓の音の中にずっと身を置いていると、独特のリズムで打ち鳴らされる音色が心地よく思えてきます。
どうせうるさいなら、ここまで徹底的にうるさいほうがいいのかもしれません。参加したらなお楽しいでしょうが、見ているだけでも体中がすっきりしました。
石取祭は平成十九年(二〇〇七)には国の重要無形文化財に、平成二十八年(二〇一六)にはユネスコ無形文化遺産にも登録されています。
今年の石取祭は八月四日(土)と五日(日)です。