新宿から電車で十五分ほどのところにある調布市深大寺。
国分寺崖線がえぐられた崖面に、地名にもなっている深大寺があります。
創建は奈良時代の天平五年(七三三)と伝わる天台宗の古刹。東国一の台密道場として栄えてきました。
崖線や谷戸の地形といえば湧き水です。深大寺境内やその周辺には豊かな湧き水があり、門前には蕎麦屋が軒を連ねています。側溝には水が流れ、沢蟹の姿も。この日は本降りの雨で、清流の音がかき消されていましたが、普段は水の流れる音が主役の道です。誰もいない晴れた日の早朝、ここを散歩したらさぞかし気持ちがいいでしょう。
さて、その深大寺。江戸時代に二度火災に遭い、堂宇の大半を失ってしまいましたが、焼けずに残った仏像があります。それが今春国宝に指定された銅像の釈迦如来倚像です。
この像は、火災後元三大師堂の須弥壇下に仮置きされたまま忘れられていたところ、明治四十二年(一九〇九)に発見され、大正二年(一九一三)旧国宝に指定されていました。その後昭和二十五年(一九五〇)の文化財保護法により重要文化財の指定を受けていましたが、このたび国宝へという経緯です。
降りしきる雨の中、閑散とした境内を進み、釈迦如来倚像が発見された元三大師堂の前を通って、白鳳仏のある釈迦堂へ。
釈迦如来像は撮影禁止なので、詳しくはこちらをご覧ください。思っていたより小ぶりで、柔和な表情をしたお釈迦様です。滑らかな肌とそれを覆う衣に手を触れ、その感触を確かめたくなるほど見事なできばえです。目を光らせた監視員付きの、一面ガラスで覆われた大きな展示空間の奥に鎮座されているので、遠くからそっと拝観するのがせいぜい。それが少し残念でした。
白鳳仏の拝観は来年の三月三十一日までです。