芦ノ湖から現代の東海道である国道一号線を小田原方面に戻るように進むと、精進池が見えてきます。その周辺に、中世に造られた石仏が点在し、元箱根石仏群と呼ばれ国の史跡に指定されています。
精進池のあたりは、ちょうど上二子山と駒ヶ岳の鞍部で、付近には中世箱根越えの道として使われた湯坂道が通っていました。
いまは車がさっと通過してしまう、なんということのない場所ですが、かつてはあちらこちらから噴煙が上がり、その不気味で荒涼とした様子から地獄として人々に恐れられていました。
そんな元箱根を通る旅人を救い守ろうと、このあたりに地蔵菩薩などが彫られたのです。
付近には流れ出た溶岩が固まった岩がたくさんあり、石仏を彫る条件が整っていました。
冒頭の写真と左上の写真は、二十五菩薩磨崖仏。右は通称火焚き地蔵と呼ばれる応朝地蔵磨崖仏です。
箱根には磨崖仏ばかりか、下の写真のような五輪塔や宝篋印塔もあります。
白眉は高さ七メートルほどの岩に彫り出された六道地蔵磨崖仏です。
像の高さは三、二メートル。箱根はもちろんのこと、関東地方でも最大だそうです。前に立つとその大きさが際立ちますが、まったく威圧感はありません。石像なのにどこか温もりを感じ、ゆったりと見守られているような気持ちになります。
命がけで箱根を通過していく旅人たちは、さぞかしこの地蔵菩薩に慰められたことでしょう。