大磯から二宮に向かう途中に、相模国の総社六所神社があります。
六所というのは、相模国の一宮から四宮までの四社と、五宮格の平塚八幡宮の祭神を合祀し、さらに当地に元々あった柳田大明神社を加えて六社としたことから、そう呼ばれるようになったものです。
ちなみに相模国一宮は寒川神社、二宮は川匂神社、三宮は比々多神社、四宮は前鳥神社です。
興味を惹かれるのは、この地が出雲国からの移住者によって開かれた柳田郷だったことで、櫛稲田姫命、素戔嗚尊、大己貴尊を合わせて柳田大明神と言っていました。
櫛稲田姫といえば、有名な素戔嗚尊による八岐大蛇退治の話に登場するヒロインです。
高天の原を追放され出雲に降り立った素戔嗚尊は、八岐大蛇の生け贄にされそうになっていた櫛稲田姫に出会います。姫の美しさに惹かれた素戔嗚尊は、結婚を条件に大蛇退治を申し出、霊力で櫛稲田姫を櫛の姿に変えると、素戔嗚尊はその櫛を髪にさして大蛇に向かい無事退治します。姫はその後人間の姿に戻り二人は結婚した、というのがおおよその内容です。
その話にちなみ、六所神社のお守りは小さな櫛の形をしています。
女性が身につけると災いから守られ、女性が困っている男性に贈ると道が開けるというので、この先の旅のお守りにと求めましたが、大磯の高麗山周辺では高麗人の足跡に触れ、その流れから秦氏の存在も垣間見ましたし、この先小田原の手前には鴨宮という地名があり、賀茂氏の存在も窺えます。そしてここでは出雲からの流れが伝わっています。
古代の大磯小田原間には、実にさまざまな人たちが海を渡り入ってきたものだなと思わずにはいられません。一体何が彼らをこの土地に導いたのでしょうか。
「歩いて旅した東海道 大磯」で鉄の話をさせていただきました。
あくまでも推測ですが、古代の人の流れと鉄の存在は無関係ではなかったのではないかという気がしています。