知立神社では毎年五月二日と三日に知立祭が行われます。その始まりは江戸時代の承応二年(一六五三)。三百六十年以上の歴史を誇ります。
本祭と間祭が一年ごとに交互に行われ、本祭の時には周辺の五つの町から豪華な山車が出て、町を練り歩きます。下の二枚の写真はいずれも旧東海道です。歩いたときはほとんど人の姿を見かけることがなかったのに、この日はご覧の通り。
五基の山車は巡行の途中曲がり角に来ると、山車を大きく傾けて担ぎ上げるように回します。京都の祇園祭でも辻回しは大変な迫力で一番の見せ場ですが、ここ知立の山車も同様です。ただ知立の場合は、重さ五トンと言われる大きな山車を傾けながら担ぎ上げて回りますので、見ていて圧倒されます。担い手たちの力の見せ所、無事方向転換すると大きな拍手がわき起こります。
町を練り歩いた山車は順次知立神社に集結、神社に奉納されます。
こうした山車の出るお祭りは京都の祇園祭を筆頭に、岐阜の高山祭、大津の大津祭、長浜も長浜祭など、各地に見られますが、知立祭の大きな特徴は、この山車の上で文楽が上演されることです。
山車上での文楽の上演は延享四年(一七四七)ごろから始まったと言われています。演目は「三番叟」「傾城阿波の鳴門」「壺坂観音霊験記」など。
また山車の上に目を向けると、そこではからくりが上演されています。知立祭のからくり人形はただ動くだけでなく、文楽に合わせて物語を上演するところが特徴です。江戸時代にはそれぞれの山車の上でからくり人形芝居が上演されていましたが、現在は西町の山車だけになりました。文楽もいいですが、からくり人形の動きも見ていて楽しいものです。
山車文楽やからくり人形芝居の上演は、地元の人たちの熱意で継承されています。
平成二十八年(二〇一六)には「知立の山車文楽とからくり」を含む三十三件が「山・鉾・屋台行事」としてユネスコ無形文化遺産に登録されました。