寄り道東海道

駿河国一宮 富士山本宮浅間大社

あけましておめでとうございます。新年早々にアクセスしてくださり、どうもありがとうございます。今年も昨年同様に東海道の紀行を中心に投稿してまいりますので、ご覧いただけましたら幸いです。

さて、二〇一八年最初の投稿は富士山をお祀りする神社のことです。

富士山周辺には静岡県と山梨県に八社ほどの浅間神社があります。

静岡県には、富士山本宮浅間大社、山宮浅間神社、村山浅間神社、須山浅間神社、東口本宮冨士浅間神社。山梨県には北口本宮冨士浅間神社、河口浅間神社、冨士御室浅間神社。神社の成立も社殿の様式もそれぞれ異なり、浅間信仰の多様性が垣間見ることができます。

すべての神社にお詣りできたらと思っていますが、まずは東海道からの寄り道として、これらの神社の中心的存在でもある駿河国一宮の富士山本宮浅間大社へ。

 

  

間口四間、奥行二間半、高さ六間半、入母屋造の楼門をくぐると、その奥に朱塗りの拝殿が見えてきます。

さらにその奥にあるのが本殿。写真に見える二重の楼閣造りは大変珍しく浅間造りと呼ばれています。

これらの社殿は関ヶ原の戦いに勝利した徳川家康の寄進で建てられたもので、当初は一万七千坪に及ぶ広大な敷地に壮大な伽藍がいくつも建ち並んでいましたが、その後幾度かの大地震で倒壊し、現在当時のまま残っているのは楼門、本殿、拝殿だけだそうです。

現存する社殿から家康の篤い信仰に目が行きがちですが、それ以前から富士山本宮浅間大社に篤い信仰を寄せる公家や武家は多く、源頼朝が社領を、北条義時が社殿を、武田信玄・勝頼親子が社領や社殿を寄進した記録も残っています。

社伝によると、第七代孝霊天皇の時代に富士山が噴火、第十一代垂仁天皇はこれを憂い、浅間大神を山足の地にお祀りしたことに始まり、その後第十二代景行天皇の時代、東征に向かう日本武尊が浅間大神に祈念して窮地を脱したことから山宮に浅間大神を祀られます。(現 山宮浅間神社)さらに後の大同元年(八〇六)坂上田村麻呂が大宮(現在地)に社殿を造営し浅間大神をお祀りした…ということになっています。

孝霊天皇も日本武尊も実在しませんので、これをそのまま信じることはできませんが、元々富士山麓で行われていた古代祭祀が、時代を経て里に場所を移し社殿を整え神社になっていった過程を示していると思うと、興味深い内容です。

それはさておき、富士山本宮浅間大社が現在地にお祀りされるようになったと伝わる大同元年の数年前には、延暦の噴火が起きていることから、富士山本宮浅間大社が現在地に社殿を構えるようになった直接のきっかけは、富士山の噴火ではないでしょうか。

噴火を繰り返す富士山に対し、鎮火、平安を願って創建されたのが各地に点在する浅間神社です。富士山本宮浅間大社の御祭神である浅間大神も火山の神ということになりますが、神社の御祭神を見ると木花之佐久夜毘売命このはなのさくやひめのみこと、別称浅間大神とあります。

これは富士山信仰が時代とともに変化していったことの顕れで、中世には神仏習合により浅間大神と浅間大菩薩が同一視されていたように、いつの時代か浅間大神が木花之佐久夜毘売命と同一視された結果です。

 

境内を歩いていると、湧玉池に出ます。この池の水は富士山の湧き水で、国の特別天然記念物に指定されていますが、湧玉とは湧くたま、つまり古代の人にとってここは水の神が顕れる場所だったのでしょう。

実は浅間大神が現在地に遷られるまで、ここにはこの霊水を福知神としてお祀りする神社がありました。現在地に浅間大神が来られたので、福知神は場所を北に三百メートルほど移動し、今は富知神社ふくちじんじゃとして鎮座しています。

富士山の「ふじ」は「ふち」や「ふし」に由来すると言われています。現在地にもともとお祀りされていた福知神の福知も「ふち」と読めます。とすると「ふじ」は元々水の信仰と関係があったのではないかということになってきます。それが噴火によって火の神への信仰が生まれ、当地に祀られていた水の神と入れ替えに、大同元年に火の神がお祀りされるようになったということなのかもしれません。

富士山信仰は幾度となく変遷を遂げており、とても複雑です。今は勉強が足りずこれ以上踏み込むことができませんが、いずれまた別の浅間神社を取り上げた際に富士山信仰のことに触れてみたいと思います。

 

湧玉池の向こうに富士山が見えました。建物がなかった昔は、富士山のすぐ真下に池があるように感じられたかもしれません。

 

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