祭祀風景

祇園祭 神幸祭の巻

京都の祇園祭というと、絢爛豪華な山鉾巡行に最も多くの人が集まり、ニュースでも取り上げられます。視覚的に美しい山鉾巡行が祇園祭の見せ場であることは間違いなのですが、そもそも祇園祭は八坂神社の祭礼で、神様が乗られた御神輿が御旅所にお出ましになるのに先立ち、通りを清めるために町衆によって始められたのが山鉾の巡行ですから、この祭の主役は御神輿です。

前祭さきまつりの山鉾巡行が無事終わった十七日の夕方、三基の御神輿が御旅所に向け八坂神社を出発する神幸祭が行われました。

神幸祭に先立ち、御神輿が舞殿にお出ましになっています。中央が主祭神である素戔嗚尊の神霊をお乗せした中御座神輿、向かって右が素戔嗚尊の妻・櫛稲田姫命の東御座神輿、向かって左が素戔嗚尊の八人の子供・八柱御子神の西御座神輿です。

夕刻、神事に続き宮出しを終えた三基の御神輿と子供神輿一基が南楼門を出発、西の石段下に集結すると、三基が荒々しく豪壮に担ぎ上げられ、煮えたぎるような熱気と興奮の中、それぞれの順路で御旅所に向かうというのが神幸祭の流れです。

 

御神輿を先導するのは、久世にある綾戸國中あやとくなか神社の久世駒形稚児です。綾戸國中神社は素戔嗚尊の荒魂あらみたまをお祀りしており、和魂にぎみたまをお祀りしている八坂神社とは「二神にして一体」という関係にあることから、久世駒形稚児が御神輿の先導をします。

御神輿渡御に先立ち、八坂神社で神事が執り行われるのですが、久世駒形稚児は馬に乗ったまま境内に入り、一度も地を踏むことなく本殿に上がるのだそうです。長刀鉾のお稚児さんですら、境内に入るときには馬から下りますので、久世駒形稚児の役割の大きさがうかがえます。

ちなみに上は神事のため八坂神社に向かうところです。

 

久世駒形稚児の姿が見えなくなるころ、「ほいっとーほいっとー」という大きなかけ声と共に、中御座神輿が石段下に現れます。六角形の屋根に鳳凰が飾られ、袈裟は紫。

 

続いて登場するのが子供神輿と東御座神輿。四角形の屋根に擬宝珠、女神をお乗せしているので朱色であでやかです。

 

 

最後に西御座神輿。八角形の屋根に鳳凰の飾り、三基の中で最も重いそうです。

 

普段交通量の多い石段下が御神輿と担ぎ手たちで立錐の余地もなくなる光景は大変な迫力です。三十三度越えの炎天下で二時間以上待ち続けるのは楽ではありませんが、千人を超える担ぎ手たちの気迫で烈しく揺さぶられる御神輿を間近で拝観できたのは、その甲斐あってのもの。言いしれぬ感動に包まれました。

 

御神輿はこの後町を練り歩き、夜遅くに御旅所に到着。二十四日の還幸祭において、また八坂神社に戻られます。

そして神幸祭を終えた今日から、後祭の鉾建てが行われ、いよいよ祇園祭の後半へ。

祭の熱気はまだ当分続きます。

 

 

 

 

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