祭祀風景

往馬大社の火祭り

大阪と奈良の境に南北に連なる生駒山地。その主峰生駒山の東麓に、生駒谷十七郷の氏神として古くから鎮座する往馬坐伊古麻都比古神社いこまにいますいこまつひこじんじゃ、通称 往馬いこま大社があります。

現在はこちらにあるように七柱がお祀りされていますが、古くは生駒山をご神体としたお社。本来の御祭神は伊古麻都比古神と伊古麻都比賣神です。

この男女の神様は、火を起こす木の神で、火燧木神ひきりぎのかみと呼ばれ、大嘗祭において亀の甲羅を焼いて占いをする際、火を献上してきたという歴史があります。

そんな火とゆかりのある往馬大社で、火祭りが行われました。

八日本祭の午後、神輿の渡御とぎょに続き、御供ごく上げ、奉弊、神楽の奉納、祭を差配する弁随べんずりによる舞の奉納などを経て、いよいよ火取りです。

高座の奥で火が起こされ、しばらくしてその火が二つの松明に移されます。

合図とともに火取り役は松明を担ぎ、石段を駆け下りると、瞬く間に視界から消えていきました。

その間わずか十数秒。ほんの一瞬の出来事でした。

神から賜った火を、大急ぎで人の世界に運んでいこうとしているのでしょうか。

往馬大社の神様の御神徳か、このあたりでは火災が少ないのだそうです。

祭が終わると、御神輿が拝殿に戻されます。

拝殿の周りでは、家内安全のお守りとして松明の燃えかすを受け取る人が列をなしていました。

往馬大社の火祭りは、奈良県の無形民俗文化財です。

 

 

関連記事

  1. 祭祀風景

    嵯峨野六斎念仏(松尾大社 八朔祭)

    六斎念仏は、平安時代に疫病が流行った際、空也上人が救済を求め太鼓や鉦を…

  2. 祭祀風景

    京都の節分 須賀神社の懸想文売り

    二月三日は節分。各地で節分の行事が行われました。節分というと鬼が登場す…

  3. 祭祀風景

    百舌鳥八幡宮 ふとん太鼓

    今年の一月、大阪の堺から西高野街道を東向きに歩いていたとき、堺市北区の…

  4. 祭祀風景

    えべっさん

    年が改まって間もない一月十日は十日戎といって、関西各地のえびす様をお祀…

  5. 祭祀風景

    京都ゑびす神社の十日戎

    この時期京都の町を歩いていると、いまなおあちらこちらに飾られている門松…

  6. 祭祀風景

    広河原の松上げ

    八月の地蔵盆の頃、京都北部に点在する山間の集落で松上げと呼ばれる松明を…

最近の記事

連載記事

  1. 登録されている記事はございません。

アーカイブ

  1. 寄り道東海道

    元箱根の石仏
  2. 心に留まった風景

    紅葉の栄摂院
  3. 古社寺風景

    木嶋坐天照御魂神社
  4. お知らせ

    書評が掲載されました
  5. 手がけた書籍(高橋英夫の本)

    『テオリア 高橋英夫著作集』第四巻刊行
PAGE TOP